モバイルアプリ開発エンジニアの木村です。
今回は、新規アプリのストア申請で行った「署名設定」の手順について解説します。
💡 この記事で分かること(要約)
flutter build appbundleで発生する「デバッグモードで署名されています」エラーの解決方法- Play App Signingの仕組みと「アップロードキー」の作成手順
- チーム開発におけるキーストアファイル(
key.jks)とパスワードの安全な管理・共有方法
署名設定はストア公開において必須の作業ですが、初期開発やリリース時しか触らないため、「いざ必要になったときには手順をすっかり忘れている」ということがよく起こります。(私も忘れておりました。)
毎回調べ直す時間のロスをなくし、次回の申請時やメンバーが増えた際にもこの記事でスムーズに作業を進められるよう、備忘録として手順を残します!
1. はじめに:発生するエラーと原因
Flutter で開発したアプリを Google Play Store に公開する際、適切な署名が必要です。 単純に flutter build appbundle コマンドでビルドしたファイルをアップロードすると、以下のようなエラーが発生します。
❌ Google Play Consoleでのエラー表示
「アップロードされた APK または Android App Bundle がデバッグモードで署名されています。APK または Android App Bundle はリリースモードで署名する必要があります。」
解決策
結論として、「キーストア(Keystore)を新規作成し、build.gradle(または build.gradle.kts)に署名設定を追加する」ことで解決します。
以下で、具体的な手順を詳しく解説します。
2. Play App Signing(アプリ署名機能)について
Google Play では、現在「Play App Signing」という仕組みが推奨されています(2021年8月以降の新規アプリでは必須)。
この仕組みにより、アプリの署名は以下の2種類に役割分担されます。
| 署名キーの種類 | 管理者 | 主な役割・特徴 |
| ① アップロードキー (この記事で作成) | 開発者 | ・Google Play ConsoleへAAB※ をアップロードする際に使用 ・万が一紛失しても、Googleサポートに申請すればリセット可能 |
| ② アプリ署名キー | ・ユーザーに配信される実際のアプリに署名するキー ・Googleがクラウド上で安全に保管・管理・開発者が紛失するリスクがゼロ |
※ AAB(Android App Bundle):Google Play推奨のアプリ配信フォーマット
Play App Signingを利用するメリット
- 高い安全性:アップロードキーが漏洩しても、アプリ署名キー自体はGoogleによって強固に保護されます。
- 安心のリカバリー:アップロードキーを紛失しても、再発行すればアプリのアップデートを継続できます。
- 配信の最適化:Googleの最適化された署名インフラを利用できます。
この記事で作成するキーは「① アップロードキー」となります。初回アップロード時に Play App Signing を有効化することで、Google が自動的にアプリ署名キーを生成・管理してくれます。
- 関連ドキュメント:Google Play App Signing の公式ドキュメント
3. 署名の準備・設定手順(7つのステップ)
ここからは、実際にアプリへ署名設定を組み込む手順を解説します。
手順1:Android Studio でプロジェクトを開く
まず、Flutter プロジェクトの android フォルダを Android Studio で開きます。 これにより、Android 固有の設定(自動補完など)を行いやすくなります。
手順2:署名用のキー(Keystore)の作成
署名用のキーストアファイルを作成します。作成方法は「Android Studio(GUI)」と「ターミナル(CLI)」の2通りあります。
A. Android Studio(GUI)で作成する場合
- メニューから
Build>Generate Signed Bundle / APKを選択 Android App BundleまたはAPKを選択し、Next をクリックCreate new...ボタンをクリックして、新しいキーストア情報を入力
B. ターミナル(CLI)からコマンドで作成する場合
以下のコマンドを実行します。
keytool -genkey -v -keystore ~/key.jks -keyalg RSA -keysize 2048 -validity 10000 -alias upload
必要な入力情報
キーストア作成時には、以下の項目を設定・入力します。
- キーストアのパスワード(安全性の高い強固なパスワードを設定)
- キーのエイリアス名(例:
upload) - キーのパスワード(キーストアと同じパスワードでも問題ありません)
- 証明書情報(氏名、組織単位、組織名、市区町村、都道府県、国コード)
⚠️ 【重要】セキュリティおよび管理上の注意点
- 紛失厳禁:キーストアファイルは絶対に紛失しないでください。バックアップを複数の安全な場所に保管することを強くお勧めします。
- Gitへのコミット禁止:キーストアファイルは絶対にGitなどのリポジトリにコミットしないでください。
- チーム開発での注意点:
- キーストアファイルは必要最小限のメンバーのみが管理する。
- 共有する際は、パスワード保護されたZIPや、企業のパスワード・機密管理システム(1Password、Vaultなど)を使用する。
- メール、Slack、Discordなどのチャットツール上で直接ファイルをやり取りするのは避けてください。
手順3:key.properties ファイルの作成
Android プロジェクトのルートディレクトリ(android/ 直下)に、環境変数定義用の key.properties ファイルを新規作成します。
作成場所:android/key.properties
ファイル内に以下の内容を記述します。
storePassword=<キーストアのパスワード>
keyPassword=<キーのパスワード>
keyAlias=<キーのエイリアス>
storeFile=<キーストアファイルへの絶対パス>
【記述例】
storePassword=myStorePassword
keyPassword=myKeyPassword
keyAlias=upload
storeFile=/Users/username/key.jks
手順4:key.properties を .gitignore に追加(推奨)
パスワード等の機密情報がリポジトリに流出するのを防ぐため、必ず .gitignore に登録します。
📂 編集対象ファイル:android/.gitignore
ファイルの末尾に以下を追記してください。
# Keystore & Signing properties
key.properties
*.jks
手順5:build.gradle.kts の設定
次に、Flutter/Androidビルド時に先ほど作成したプロパティファイルを読み込む設定を追記します。
📂 編集対象ファイル:android/app/build.gradle.kts(※古いプロジェクトの場合は build.gradle)
以下のように、ファイルの先頭と android ブロック内に追記を行います。
import java.io.FileInputStream
import java.util.Properties
// 1. ファイル先頭付近に追記
val keystoreProperties = Properties()
val keystorePropertiesFile = rootProject.file("key.properties")
if (keystorePropertiesFile.exists()) {
keystoreProperties.load(FileInputStream(keystorePropertiesFile))
}
android {
// 既存の設定...
// 2. signingConfigs の設定を追加・編集
signingConfigs {
create("release") {
keyAlias = keystoreProperties["keyAlias"] as String
keyPassword = keystoreProperties["keyPassword"] as String
storeFile = file(keystoreProperties["storeFile"] as String)
storePassword = keystoreProperties["storePassword"] as String
}
}
buildTypes {
getByName("release") {
// 3. リリースビルドに上記の設定を紐付け
signingConfig = signingConfigs.getByName("release")
}
}
}
手順6:署名付きビルド(AAB)の作成
これで準備が整いました。 プロジェクトのルートディレクトリで以下のコマンドを実行し、署名済みの Android App Bundle をビルドします。
flutter build appbundle
正常に完了すると、以下のパスに .aab ファイルが出力されます。 build/app/outputs/bundle/release/app-release.aab
手順7:Google Play Console へのアップロード
生成された上記の .aab ファイルを、Google Play Console のリリース管理画面にドラッグ&ドロップしてアップロードします。 エラーなくアップロードが完了すれば、署名設定は成功です!
4. まとめ
以上の手順で Flutter アプリを正しく署名し、Google Play Store に公開することができます。
Play App Signing を利用している場合、作成したキーは「アップロードキー」として機能し、実際のアプリ署名は Google が安全に管理します。それでもキーストアファイルとパスワードは安全に保管し、定期的にバックアップを取ることをお勧めします!
この記事が、みなさんのFlutterアプリ公開プロセスのスムーズな進行に役立ちましたら幸いです!
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